「セックスレス」とは、夫婦やカップル間で性行為がほぼない状態が継続することを指します。一方が感じていなくても、相手にとっては深い孤独感や不満の根源に。性生活の停滞は、身体的・精神的な健康にも影響します。本記事では、「セックスレスとは何か」を定義→実態データを示し→原因を分析→法的観点や解消法まで網羅的に解説します。
セックスレスの定義と現状

セックスレスとはどういう状態を指すのか、また日本国内の年代別データを通して、実態を明らかにしていきます。
「セックスレス」とは何か?
一般に“セックスレス”とは、性行為が「1年以上」または「半年以上」ない状態を指すことが多いです。ただ、個々の主観や満足度にも左右されるため、あくまで一つの目安。重要なのは「お互いが望んでいた性の関係が途絶えた」という精神的実感です。
年代別・実態データ
セックスレスの実態をより深く理解するために、年代別の傾向だけでなく、夫婦と未婚カップルの違いや結婚年数による変化にも注目する必要があります。
年代別の傾向
以下は年代別のセックスレス割合と主な要因の簡易表です
年代 | セックスレス割合 | 主な要因 |
20代 | 約30% | 性への期待と現実のギャップ、生活環境の不安定さ |
30代 | 約40% | 妊活・出産・育児による性の後回し |
40代 | 約50%以上 | 仕事や子育てのピーク、パートナーシップの形骸化 |
50代以上 | 約60〜70% | 性欲の減退、健康問題、精神的つながり重視 |
この背景には、育児や仕事による生活の変化、体力の低下、性生活に対する価値観の変化などが影響しています。
夫婦とカップルの違い
既婚者と未婚カップルでは、セックスレスの定義や悩み方が異なります。未婚カップルでは、「性の頻度が落ちた」と感じること自体が関係の危機と捉えられやすく、比較的早期に別れに繋がることも。一方で、結婚生活では“セックスがなくても続く関係”と割り切るケースもあり、我慢や無関心の形で長期化する傾向があります。
結婚年数による影響
- 新婚(0〜3年):性生活の頻度は高いが、妊活や出産を機に変化が起こりやすい。
- 中期(4〜10年):子育てや仕事の多忙さから性が後回しになるケースが増える。
- 熟年(10年以上):性の優先度が下がる一方で、パートナーとの関係性が重要視され、セックスレスを問題視しない人も増える。
性に対する価値観の違い
世代によって、性に対するオープンさや重要性の感じ方にも差があります。特に若年層は「愛情表現の一つ」として重視する傾向が強く、中高年層は「無理してまで求めない」という考えが根付きやすい傾向があります。
このように、セックスレスの実態は単なる数値だけでなく、ライフステージや関係性によって多様な形で表れるのです。
セックスレスが起きる原因

セックスレスは身体や心、そして夫婦関係など複数の要因が絡み合って発生します。この章では主な原因を3つの観点から分析します。
セックスレスは身体や心、そして夫婦関係など複数の要因が絡み合って発生します。この章では主な原因を3つの観点から分析します。
身体的・生理的な要因
加齢やホルモンバランスの変化(更年期)、女性の出産・授乳期間、男性のED(勃起障害)、慢性疾患、服薬の副作用などが原因に。性欲や身体の反応は単なる気持ちだけでなく、体の状態とも深く結びついています。
心理・精神的な要因
仕事のストレス、子育て疲れ、産後うつ、ケガや病気からくる自己イメージの低下、過去のトラウマなども性欲の減退につながります。
関係性・環境的な要因
夫婦仲の悪化、モラハラ、価値観の違い、コミュニケーション不足がセックスレスを招きます。夜間の育児・家事の負担、金銭トラブルなどによって、なんとなく一緒にいるのに“すれ違っている”感覚が生まれます。
セックスレスからの離婚・慰謝料の実際

性の不一致や拒否が原因で夫婦関係が破綻する場合、法的に離婚や慰謝料請求が認められることも。本章では離婚理由や慰謝料相場、必要な証拠などを紹介します。
離婚原因になる?
裁判例では、長期間に渡り性生活が皆無だった場合、「婚姻生活の本質的義務を果たしていない」として離婚事由(民法770条1項6号)として認められるケースがあります。特に、10年以上続いた“熟年セックスレス”による熟年離婚は増加しています。
慰謝料請求と相場の目安
故意的な拒否や浮気が絡むと慰謝料の対象に。一般的には数十万円〜数百万円、50代以上のケースでは100万円前後を超えるケースもあります。相手が性生活を正当な理由なく断った場合、裁判で請求できる余地があります。
証拠集めと訴訟の流れ
通院歴や診断書、カウンセリング記録、夫婦間のやり取り(メール・LINE)などが証拠に。肉体的な拒否の実態を裏付けることが法律的に重要になります。
セックスレスの解消法・対処法

セックスレスを乗り越えるためには、コミュニケーションから医療的サポートまで幅広い対策があります。ここでは効果的な解決法を段階的に解説します。
コミュニケーション改善策
- 週1回など「セックスについて話す時間」を設定
- “責めずに自分の気持ち”を伝えるアサーティブな話し方
- お互いの考えや不満をリスト化し対話する場を設ける
身体的アプローチ(医療・治療)
- 医師へ相談→ED治療薬(バイアグラ等)やホルモン補充療法
- 女性の性機能回復ケア:カウンセリングや性機能障害専門クリニック
- 性機能改善に効く漢方やサポートサプリ(医療の指導下で)
生活習慣・ムードづくり
- 睡眠・運動・食事の質向上
- 定期的なデート(旅行・温泉・ホテルステイ)で非日常を演出
- 夜の照明・香り・音楽などで特別な雰囲気を作る
専門家・第三者の支援利用
- 性生活専門カウンセラーや夫婦カウンセリング
- 市区町村の相談窓口、オンラインサポートサービス
- 性やカップル関係を取り扱う書籍やワークショップも選択肢に

成功ケーススタディ

実際にセックスレスを乗り越えたカップルの事例を3つ紹介します。具体的な対処法や心の変化を通して、改善のヒントを探っていきましょう。
ケース①:Aさん(45歳・夫婦歴20年・子供独立)
状況:性交渉が5年以上停止。夫婦で会話も少なくなっていた。
原因:更年期による性欲減退と「もう必要ない」という夫の無関心。
対処:
妻が心療内科でホルモンバランス調整を実施。
「セックスレスについて話す時間」を毎週15分確保。
温泉旅行で久々のスキンシップを再開。
結果:月1ペースの性生活が復活。お互いの愛情を再確認し、熟年離婚を回避。
ケース②:Bさん(33歳・結婚6年目・妊活中)
- 状況:妊活をきっかけに夫が性交渉を避けるように。妻が孤独を感じ始めた。
- 原因:プレッシャーと“義務的なセックス”へのストレスで夫の性欲が減退。
- 対処:
- 妻が「気持ちより回数を求めていた」と反省し、謝罪。
- 二人で「妊活中心」から「関係中心」へ発想転換。
- 不妊治療を一時中断し、趣味やデートで気分転換。
- 結果:夫が自然に求めるようになり、再び妊活に前向きな姿勢に。
ケース③:Cさん(29歳・同棲中・交際4年目)
- 状況:同棲して3年、仕事で疲弊した彼氏が完全に性を拒否。
- 原因:彼の慢性的ストレス、性生活のルーティン化。
- 対処:
- 彼の「拒否の本音」を聞くため、第三者(カウンセラー)を介して対話。
- 二人の間で「性=義務」になっていたと気づき、リセット期間を設ける。
- ムードづくり・下着や香り・旅行などの工夫を再開。
- 結果:彼が少しずつ性に前向きに。週1回の「抱き合う時間」から再構築。
まとめ・実践ステップ

記事全体を振り返り、実践すべきステップや心がけを整理します。読者の方が今すぐ動き出せるよう、明確な指針を提供します。
ステップ・チェックリスト
- 【現状把握】性交頻度、期間、原因の整理
- 【原因特定】身体・心理・関係性のそれぞれを分析
- 【会話の場を設ける】「セックスについて話せる安全空間」作り
- 【医療・生活改善】必要に応じて治療・生活改善を実施
- 【専門家を活用】カウンセリングや支援サービスを利用
重要ポイント
- 相手を責めず、自分の気持ちや困っている現状を丁寧に伝える
- 「責め合い」ではなく「二人で取り組む問題」として対話を進める
- 小さなきっかけ(話し合いや旅行)から前向きな変化を生む
最後に
セックスレスは、単なる性行為の欠如ではなく、心のつながりの欠如からくる深刻な関係問題です。感情の摩擦や身体の変化、生活環境のズレが複雑に絡み合い、長期的な無関心へとつながっていきます。しかし、この課題は“関係の終わり”ではなく“関係再構築のチャンス”と捉えることもできます。
まずはパートナーとの対話から始めてみてください。相手を責めず、自分の気持ちを整理し、伝え、聞く。それだけでも少しずつ関係は変わり始めます。
また、ひとりで悩みを抱え込まず、専門家の力を借りることも大切です。夫婦カウンセリングや医療機関、地域の相談窓口、オンラインの情報や体験談など、頼れる資源は想像以上にあります。
どんなに長く続いたセックスレスでも、前向きに向き合い、ステップを踏めば関係の改善は可能です。そしてその過程が、セックスそのもの以上に大切な“心の再接続”を生むかもしれません。
小さな行動から未来は変えられます。今日、この記事を読んだこと自体が第一歩です。
パートナーシップは“維持するもの”ではなく“育てていくもの”。お互いに歩み寄る努力を続けることで、セックスレスをきっかけにさらに深い信頼と絆を築ける可能性もあります。人生のステージに応じて、性のあり方も変わっていきます。だからこそ、柔軟に話し合い、変化を恐れず、再び寄り添える関係を目指していきましょう。
