本記事は、ある既婚女性から聞いた体験をもとに構成しています。プライバシー保護のため一部の設定を変更しています。
既婚者の出会いの場に参加した体験談から見えてきたのは、恋愛そのものではなく「自分らしく過ごせる時間」を求めていたという気づきでした。この記事では、既婚者パーティーへの参加をきっかけに、出会いから関係の変化、そして自分の本当の気持ちに気づくまでを紹介します。
子どもが成長し、夫婦の会話も少なくなっていく中で、「私って、何してるんだろう?」と感じるようになったという彼女。そんなとき、ふと目にしたのが「既婚者向けのパーティー」でした。
最初は、ただの興味本位。誰かと恋をしたかったわけでも、夫と離婚したかったわけでもありません。
ただ、家族のために過ごす毎日の中で、いつの間にか置き去りにしていた「自分の時間」を取り戻したかったのです。
これは、そんな彼女が出会いの場に参加し、そこで感じたこと、そしてその経験を通して「本当に欲しかったもの」に気づくまでの物語です。
既婚者パーティーに参加してみた
「はじめまして、あやこです」
ホテルのレストランに足を踏み入れた瞬間、どこを見ても眩しかった。
入って一番最初に思ったことは、「私はこんな場所に来られる人間なんだ!」ということです。これまで外食に行くといえば、家族でいけるファミレスや回転ずしばかりでした。そんな私が、こんなにも素敵な場所に来られたことが嬉しくて堪らなかったのです。
「あやこさん、何飲みますか?」
ホテルの雰囲気に圧倒されていると、シャンパンを手にした男性が声をかけてきました。

周りを見渡すと、みんなそれぞれ自然な形で声をかけ合っている様子でした。
結婚する前に街コンに参加したときは、男性陣もどこかまごまごしていたのを覚えています。話しかけたいけれど、話しかけられない。結局、男性同士、女性同士で集まっている人もたくさんいました。
でも、この場所は違っていました。
既婚者が集まっているからなのか、みんな人との距離の取り方に慣れているように感じられたんです。
「こういうの、初めてですか?」
「はい。ちょっと緊張してます」
「僕も最初は緊張しましたよ」
斎藤と名乗る彼は、とても話しやすくて、強張った体がゆるんでいくのを感じました。
しばらく二人で話していると、そこに何人かが合流してきて、気づけば、男女6人ほどのグループになっていました。
こういう場だからなのか、家族の話題は一度も出ることなく、趣味の話が中心でした。この時はたまたまみんなが音楽好きだったこともあり、昔の懐かしい曲から最近の流行りの曲の話まで話題が広がっていきました。
「俺、学生の頃バンドやってたんですよ」と話す男性がいて、そこから昔の音楽の話で盛り上がりました。
「あ、その曲知ってる!」
「懐かしい!」
「高校生の頃、めちゃくちゃ聴いてた」
笑い声が何度も起こりました。何も考えずに好きなことを語り合う。なんだか、本当に学生時代に戻ったような気持ちでした。
正直に言えば、ここに来るまで、私は少し不純な気持ちを持っていました。
誰かに女性として見られたい。自分がまだ一人の女性として存在していることを確かめたい。
そんな気持ちが、どこかにあったと思います。
それでも、こうして何も考えずにみんなでわいわいと話す時間がどれだけ自分にとって必要なことだったのか、このとき初めて気づきました。
6人で盛り上がった私たちは、そのまま自然な流れで二次会へ向かいました。そこは、隠れ家のような雰囲気のバーでした。
照明は少し暗く、静かな音楽が流れていました。おしゃれな空間とお酒。そのムードから、酔いが回るのは十分でした。
「こんなにも何も考えずに飲めたの、いつぶりだろう」
楽しかったはずなのに、私は泣いていた
最近の私の生活といえば、休日は食品や日用品の買い出し。平日はパートと家事。それ以外の時間は、暇な時間を潰すように動画を見ているだけ。そんな毎日を過ごしています。
もう長らく、こんな風に何も考えずに、ただ楽しくお酒を飲むことなんてありませんでした。そのことを考えていた時、私の目から、涙がこぼれました。
「……まずい」
どうして?さっきまで、あんなに楽しかったのに。
みんなは楽しそうに笑っている。せっかく楽しい時間なのに、突然泣き出したりしたら、きっと空気を壊してしまうに違いありません。
そう思った私は、「ちょっと電話してきます」と嘘をついて、急いで店の外に出ました。
「何がどうして、こうなったの?」
涙が止まらない。楽しかった。本当に楽しかった。なのに、どうしてこんなに苦しいのでしょうか?
早く、みんなのところに戻らないと。でも、このまま帰ってしまいたい。そんな二つの気持ちが、頭の中でせめぎ合っていました。
荷物は店の中です。どちらにしても、戻らなければなりません。
涙を抑えるために、私は動画を見て気持ちを落ち着けることにしました。いつも夜、一人で観ている動画。私の精神安定剤のようなものです。
いつもの動画。
いつもの声。
いつもの音。
なのに、その時は何も頭に入ってきませんでした。
それどころか。真っ暗な部屋で、ベッドに横になってスマホを見ている自分の姿が浮かんできたのです。
家族が寝たあと、一人で動画を見る私。
誰とも話さず、一日を終える私。
「私、いつもこんな感じだったんだ……」ぼんやりとそんなことを考えていました。
「大丈夫ですか?」
振り返ると、斎藤さんが立っていました。

「斎藤さん……」
「なんだか様子がおかしかったので。バッグ、持ってきましたよ。立てますか?」
私は酔いが回っていたからなのか。それとも、斎藤さんに安心していたからなのか。今でもよくわかりません。ただ、私は泣き顔を見られないように顔を逸らしながら、黙って斎藤さんについていきました。
優しさに、心がほどけていった夜
斎藤さんは、人目を避けるように個室のある居酒屋へ連れていってくれました。
「まだ目、赤いですよね……」
「大丈夫ですよ」
「すみません」
「謝らなくていいです」
斎藤さんは、私が泣いていた理由を聞くことはありませんでした。
それがありがたかった。だって、自分でもどうして泣いたのかわかっていなかったから。
「お酒が入ると、自分でもよくわからなくなりますよね。笑い上戸とか、泣き上戸とか」
「そうですね……」
斎藤さんは笑った。
「落ち着くまで、ゆっくり飲みましょう」
それから斎藤さんは、何気ない話を聞かせてくれました。
仕事の話。
音楽の話。
最近見た映画の話。
くだらない冗談。
何を話してくれたのか、今ではあまり覚えていません。
ただ、私を楽しませようとしてくれていたことだけは覚えています。
その優しさが、心地よくて、いつの間にか、二人の席は横並びになっていました。確か、斎藤さんがトイレから戻ってきたタイミングでそうなったのだと思います。
「隣に、座ってもいいですか?」と声をかけられたことは覚えています。
私はこの頃には、斎藤さんの優しさにすっかり甘えてしまっていたので、警戒心はまるでありませんでした。

「どうして隣に来るんだろう?」くらいには思ったかもしれません。でも、嫌な感じはしなかったんです。
それから他愛もない話をしながら、お酒を飲みました。話しながら、お酒を飲みながら、少しずつ、二人の距離が近づいていることには気づいていました。
斎藤さんの肩が、私の肩に触れる。そのまま、肩を抱き寄せられたけれど、私は抵抗しなかった。
正直言うと、「嬉しい」と思ってしまいました。
誰かにこんなふうに優しくされたのは、久しぶりのことです。夫と最後に肩を寄せ合ったのも、もういつのことだか覚えていません。
だから、斎藤さんとこのような雰囲気になった時、正直私はどうなってもいいと思ってしまったんです。
そうしているうちに、斎藤さんの顔が近づいてきました。
「ちょっ、それは……」
キスをされそうになった、その瞬間。不思議と、頭の中に家族の顔が浮かんできました。
「さすがに、これ以上は……」自分でも消え入りそうな声だったと思います。
でも、斎藤さんには聞こえたようで、「すみません。雰囲気で、つい」と言って、すぐに離れていってくれました。
「もうしませんから」そう言いながら、斎藤さんは少し申し訳なさそうな顔をしながら、再び対面の席に戻っていきました。
その後、少しだけ話をして、店を出ました。お店の前ですぐに解散しましたが、 斎藤さんと別れた後も、私の心臓はうるさいままでした。
車窓に映る自分の顔をぼんやりと見つめたまま、「私、何してるんだろう」とその日のことを思い返していました。
後悔をしているというよりかは、言葉には言い表せない生暖かい感情で、胸がいっぱいになりました。
そんなとき、斎藤さんからメッセージが届きました。

電車の中で、彼からのメッセージを何度も読み返しました。とても誠実なメッセージ。何と送ろうかとスマホに指を這わせるも、私はしばらく返信できませんでした。
あの人からのLINEを待つようになった
その後、斎藤さんに「こちらこそ、気遣ってくれてありがとうございました。また会いたいです」と送りました。
それからは、他愛もないLINEを毎日のようにやりとりし始めました。
最初は、ほんの短いやりとりでした。
「今日はお仕事ですか?」
「はい。今終わりました」
「お疲れさまでした」
ただそれだけのやりとり。
それなのに、斎藤さんとLINEを始めてから、私はスマホを見る回数が増えていきました。
朝、息子を学校へ送り出す。
洗濯機を回食器を洗い、掃除をする。
そんな合間に、自然とスマホを確認している自分がいました。
仕事中なのですから、通知はありません。

「まだかな」と思っている自分に気づいて、少し笑ってしまいました。
パートから帰って、息子と夕飯を食べ、食器を片づける。息子がお風呂に入ると、家の中はとたんに静かになります。
私はそのタイミングで、ホッと一息をつくようにスマホを眺めます。
「今日はどんな一日でした?」
ただ一言、斎藤さんからのLINEが届いていました。
私は、少し考えてから「普通の一日でしたよ笑」と返信しました。私の毎日には、特に代わり映えのする日はありません。
すると、「普通の一日って、実は一番大事ですよね」と返ってきました。
その言葉を見て、私は妙に嬉しくなりました。
私の日常を気にかけてくれる人がいる。今日何をしたかを聞いてくれる人がいる。
それだけで、自分の一日が少し意味のあるものになったような気がしたからです。
それからも斎藤さんとは、今日聴いた音楽や、昔好きだった曲、最近見た動画や、くだらない話をLINEで話し続けていました。
夫とは随分、こんな話をしていません。友達ともすっかり会うことはなくなったので、他愛もない話をできる相手は、斎藤さんだけです。
気づけば、斎藤さんとのLINEが、私の一日の中で一番楽しみな時間になっていました。
嬉しい気持ちと同時に、少し怖いとも思っていました。
「私、依存してるのかな」そう思ったからです。
それでも、斎藤さんとのやりとりをやめようとは思いませんでした。
「音楽を聴きに行きませんか?」
ある夜、LINEで音楽の話をしていた時のことです。
「この前話してた曲、聴きました」
「どうでした?」
「懐かしかったです」
「ですよね」
「最近、昔の曲ばかり聴いてます」
「今度、一緒に聴きに行きません?」
画面を見たまま、私は固まってしまいました。
会いたい。でも、会ってはいけない。さすがに、自分でも制限をかけなければと思っていました。それでも、指は動いていました。
「音楽だけなら」送信したあと、自分に言い聞かせました。
音楽を聴きに行くだけなら大丈夫。
当日、待ち合わせ場所へ向かう電車の中で、私は何度もスマホを確認しました。
「何をしてるんだろう」そんな罪悪感もありました。
でも、それ以上に楽しみだったのです。
実際、その日はとても楽しく、好きな曲が流れると、二人で笑い合っていました。

「この曲、知ってます?」
「知ってる!」
そんな会話が嬉しかったのを覚えています。
「久しぶりに心から笑っている」そう思いました。
楽しくて、楽しい時間があっという間で、その日の帰り。「もう少し一緒にいたい」と思ってしまいました。
その先のことは、今でも鮮明には思い出したくないです。
ただ、その夜。私たちは、越えてはいけない線を越えてしまいました。家に帰ったのは、かなり遅い時間だったと思います。
玄関のドアを開けると、家の中はすでに暗くなっていました。息子はもう寝ていて、夫も帰っていました。
私はそんな状態の家へと、静かに入っていきました。ベッドに横になると、胸が苦しくなりました。
「どうしよう」
そう思う一方で、斎藤さんに抱きしめられたときの安心感を思い出していました。
誰かに求められること。
誰かに必要とされること。
それが、こんなにも嬉しいものだったなんて。
私は、自分でも自分がわからなくなっていました。
楽しかったはずの関係が、少しずつ変わっていった
それからしばらく、私と斎藤さんの関係は続きました。
最初の頃は、とても楽しくて、いけないことをしているという気持ちが高揚感に繋がっていたんだと思います。
LINEが来る。会える。
「会いたい」と言ってもらえる。
女性として見てもらえる。
そのことが嬉しくてたまりませんでした。
でも、時間が経つにつれて、少しずつ何かが変わっていくのを感じていました。
最初は、些細な変化でした。「次はいつ会える?」だったのが、「来週、この日空いてる?」になった。
さらに、「この日、会えるよね?」になっていったのです。
私は少しずつ、違和感を覚えるようになりました。
今日は会いたくない。家でゆっくりしたい。
そんな日もありました。
でも、断る理由を考えるのが面倒で、「せっかく時間を作ってくれているし」と思って、会っていました。
いつの間にか、会うことが義務のようになり、体を重ねることも、特別なことではなくなっていました。
最初は、あんなにドキドキしたのに。
最初は、あんなに嬉しかったのに。
いつからでしょうか。
「今日も会いたい」ではなく、「また会わなきゃ」と思うようになったのは。
LINEが来ても、以前ほど嬉しいとは思えず、「今度いつ会える?」という言葉を見ると、ため息を付くようになっていました。

LINEが届いても、スマホを伏せて、返信を後回しにしていました。
そんな日々が続いたある日。「私は、何のためにこの関係を続けているんだろう?」と考えるようになりました。
最初は、自分のために時間を使いたかった。
日常から少し離れたかった。
誰かと笑いたかった。
それなのに。
今の私は、斎藤さんのために予定を空けている。
斎藤さんの連絡を気にしている。
斎藤さんの機嫌を考えている。
「これじゃ、また誰かのために生きているだけじゃない」
そう気づいたのです。
それから、斎藤さんから「今週、会えない?」とLINEがきても、「ごめん。今週は無理です」と初めて、素直に断れました。
それから、少しずつ自然と返信する回数を減らしていきました。
斎藤さんから連絡が来ても、すぐには返さない。
会おうと言われても、曖昧にする。
何度かそんなことを繰り返しているうちに、私たちの関係は自然と終わっていきました。
大きな喧嘩をしたわけでもない。別れ話をしたわけでもない。ただ、少しずつ離れていった。そして、気づけば連絡を取らなくなっていました。
私が欲しかったのは、恋ではなかった
斎藤さんとの関係が終わってから、私は少しずつ自分の時間を取り戻していきました。

音楽を聴く。
好きなことを話す。
誰かと笑う。
そんな何気ない時間が、思っていた以上に心を満たしてくれました。
あの頃の私は、寂しさを埋めるために誰かを求めていたのだと思います。でも、本当に欲しかったのは恋ではありませんでした。
家族のために生きるだけではなく、「私自身」として楽しめる時間が欲しかったのです。
妻であることも、母親であることも大切です。
でも、それだけが私の人生ではありません。
今は、自分の好きなことをする時間を少しずつ持つようになりました。
誰かに必要とされなくてもいい。
誰かに女性として見てもらわなくてもいい。
自分で自分を楽しませることができる。
それを知れたことが、あの経験を通して私が得た一番大きな気づきでした。
今でも、ときどきあの夜を思い出すことがあります。
ホテルの眩しい照明。
みんなで笑った音楽の話。
そして、店の外で一人泣いた私。
あの涙は、きっと「もっと自分の人生を楽しみたい」という心からのサインだったのだと思います。
だから、あの頃の私に今ならこう伝えたい。
「あなたが欲しかったのは、恋じゃなかったんだよ。」
「自分に戻れる時間が、欲しかったんだよ。」
そして今、私は誰かにそれを求めるのではなく、自分自身でその時間を作っています。
自分らしく過ごせる場所を、夫婦の外にも持っていい
今回の体験談が示しているのは、既婚者の出会いが必ず恋愛につながるということではありません。
今回の体験談の女性が最後に気づいたのは、「誰かに愛されたい」という気持ちの奥に、自分らしく笑える時間が欲しかったということでした。
家族を大切にしながらでも、夫婦とは別の場所で誰かと話したり、好きなことを共有したりする時間を持つことはできます。
「夫には話しにくいことを誰かに聞いてほしい」
「家庭の中だけでなく、一人の女性として話したい」
「同じような立場の人と、気軽に話してみたい」
そのような気持ちがあるなら、無理に一人で抱え込む必要はありません。
既婚者マッチングアプリ Afternoon.(アフタヌーン)のように、既婚者同士だからこそ話しやすい、悩みや日常を共有できるコミュニティを利用するのも一つの手です。
恋愛だけを目的にするのではなく、普段の生活では出会えない人と話したり、自分の時間を楽しんだりしている人がたくさんいます。
夫婦関係だけを、自分の居場所にする必要はありません。
少しだけ日常の外に目を向けて、自分らしく過ごせる場所を探してみてもいいのではないでしょうか?











